「マチガキ泊」の正体

(イメージ画像)
振り返りからの着眼:マチガキ泊は何処?
武田鉄矢さんのラジオ番組【今朝の三枚下ろし風】聖域への入り口「マチガキ」を歩く

(あのギターのイントロが流れてくる……)

武田:おはようございます、武田鉄矢です。
かな:おはようございます、中根かなです。

武田*:かなさん、沖縄っていうと、今はリゾートのイメージが強いけれど、あそこはかつて「神々の島」だったわけですよ。

かな:そうですね、御嶽(うたき)とか、今も大切にされていますよね。

武田:その中でも最高峰と言われるのが「斎場御嶽(せーふぁうたき)」。琉球王国の最高神職、聞得大君(きこえおおきみ)が就任儀式を行う場所です。この儀式を「御新下り(おあらうり)」と言いましてね、400年以上も続いた国家的な大イベントなんです。

かな:お新下り。名前からして神聖な感じがします。

武田:ところが、今回面白い資料を見つけましてね。この聞得大君一行が、首里から知念までどうやって行ったのか。実は海を渡って、ある「泊(港)」に降り立ったという記述があるんです。その名も「マチガキ泊(待垣泊)」。

かな:マチガキ……。今の地図には載っていない名前ですね。

武田:そう!そこがミステリーなんです。「マチガキってどこだ?」と。候補に挙がったのは、有名な馬天港か、それとも安座真漁港か。これを調べていくと、当時の「空間の論理」が見えてくる。
まず、馬天港は便利だけど、聖地からはちょっと遠い。王国の公式記録『琉球国由来記』を紐解くと、マチガキ泊は知念間切、つまり聖域の「すぐ手前」にあるべきなんです。現代の保存活用計画でも、この待垣泊は「安座真(あざま)集落」にあったと記されているんですね。

かな:じゃあ、今の安座真漁港あたりがそうなんですか?

武田:ところがね、ここからが面白い。単に港に降りればいいわけじゃない。儀式には「手順」がある。大君は船を降りた後、「ウローカー」という井泉(川)に立ち寄って、身を清める「禊(みそぎ)」をしなきゃいけないんです。

かな:あ、いきなり御嶽に入るんじゃなくて、まずはシャワー……じゃなくて、お清めなんですね。

武田:そう(笑)。このウローカー、実は今の「久手堅(くでけん)」という集落にあるんです。となると、安座真に降りるのもいいけれど、実際には久手堅の「前の浜」に降りたほうが、ウローカーを通って御嶽へ向かう動線としては完璧にスムーズなんですよ。

かな:なるほど!名前は「安座真のマチガキ」として残っているけれど、実際には久手堅の浜まで含めた一帯が、聖域への「玄関口」だった。

武田:そういうことなんです。「マチガキ」の「マチ」は「前」や「入り口」、「ガキ」は「境界の垣根」。つまり、あそこは単なる港じゃなくて、この世と神の世を分ける「門」だったんですね。

かな:地名の中に、ちゃんと役割が刻まれているんですね。

武田:今の安座真漁港や久手堅の浜を歩く時、そこがかつて最高神女が震える手で身を清めた場所だと思ってみてください。ただの海が、急に歴史の重みを持って迫ってきますよ。
学ぶということは、景色を変えることですね。
では、また明日。

(テーマ曲がフェードアウト……)

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