透明性の確保と「都市のアップサイクル」による持続可能な自治体モデルの提言

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南城市における行政経営の再構築

序論:南城市における政治的転換点とガバナンスの崩壊

沖縄県南城市は、2025年末の市長選挙を経て、未来への大きな一歩を踏み出した。

長く続いた慣習や閉塞感を乗り越え、新しい市政の姿を自らの手で描き出そうとする「変革の機運」が、市民一人ひとりの中に確かに芽生えている。  

今回の選挙は、単なる政治の転換ではなく、「透明で誠実な行政を取り戻そう」という南城市民の強い意思が形となった出来事だった。

過去の出来事を通じて、私たちは権力の集中や組織のゆがみがいかに人々の信頼を損なうかを痛感した。

同時に「声を上げ、行動すれば変えられる」という確かな学びも得た。

試練の歴史から得た経験こそ、南城市がこれから成長していくための貴重な土台になる。  

2025年12月の選挙では、市民の信頼と希望を背負って大城憲幸氏が初当選した。

政党や組織の支援に頼らず、ただ「市政にしがらみを持ち込まない」という信念を掲げた姿勢は、多くの市民の共感を集めた。

その結果は、「これからの南城は、市民が主役となって築くまちである」という新しい時代の幕開けを象徴している。  

大城新市長が掲げる「信頼関係を第一に、意識改革を進める」という言葉の通り、いま求められているのは、市職員と市民が力を合わせ、未来をともにデザインしていくことである。

過去を責めるのではなく、そこから学び、次の世代に誇れる新しい南城を創り出す――それが、私たちすべての市民が共有できる目標である。  

困難な時期を経験した今だからこそ、南城市は再生のチャンスを迎えている。

風通しのよい行政、公正で温かいまちづくり、互いを信頼し合える地域社会――それらを実現する力は、このまちに暮らす一人ひとりの中にある。

未来への希望を胸に、南城市は新しい時代へと歩み出している。

本報告書では、南城市が直面するガバナンスの課題を「しがらみ打破」と「外部監査機能の強化」という二つの側面から分析し、限られた財政資源の中で効果を最大化するための戦略を提案する。

さらに、その副次効果として期待される「アップサイクル」思想の具現化を通じ、既存の資産や価値を再定義し、持続可能な都市経営を実現するための具体的ロードマップを提示する。

第一章:ガバナンス刷新の基盤—しがらみの打破と外部監査の構造改革
市政を刷新するためには、まず汚職やハラスメントを許容してきた旧来の「しがらみ」を構造的に解体する必要がある。

南城市におけるしがらみとは、特定の有力者や地縁、組織票に依存した意思決定プロセスであり、これが透明性を著しく損なってきた。

権力の私物化と行政手続の歪曲
前市政下では、人事や行政手続きにおいて極めて不透明な介入が行われていたことが報告されている。

特に、農業委員の選任において、選挙の結果を覆して市長が指名する人物に入れ替えるよう副市長が指示したとされる事件は、民主主義の根幹を揺るがす重大な非違行為である 。

このような行為は、行政手続法第29条以下に明記された「適正な手続きの保証」に著しく違反するものであり、法的正当性を欠いた行政運営が行われていたことを示唆している 。

さらに、ハラスメント疑惑を巡る不信任案が市議会で可決された際、前市長が解散権を行使して自己保身を図ったことは、議会制民主主義に対する挑戦とも受け取られた 。

このような強権的な手法は、組織内に沈黙を強いる文化を醸成し、外部のチェック機能が働かない「閉鎖的なムラ社会」としての行政組織を作り上げてしまったのである。

外部監査機能の抜本的強化とコンプライアンスの再構築
「しがらみ」を打破し、公正な市政を取り戻すための第一歩は、内部監査の限界を認め、強力な「外部の目」を導入することである。

これまでの第三者委員会の調査は、事後の不祥事対応としての側面が強かったが、今後は常設的・予防的な外部監査機能の強化が不可欠である。

| 強化項目 | 具体的な施策内容 | 期待される効果 |
|---|---|---|
| 包括外部監査の拡充 | 弁護士や公認会計士等、独立した専門家による定期的な業務監査の実施。 | 予算執行の透明性確保と、癒着の早期発見。 |
| 常設コンプライアンス委員会 | 市長から独立した権限を持つ外部委員会を設置し、ハラスメント通報等を直接受理。 | 内部通報者の保護と、不適切な指示の拒絶。 |
| 行政手続きのデジタル化 | 意思決定プロセスのログを保存し、外部監査がいつでも検証可能な状態にする。 | 恣意的な人事や委員選定の防止。 |
| 公益通報者保護の厳格化 | 通報者への報復人事や誹謗中傷に対し、外部委員会が直接的な制裁措置を勧告する仕組みの構築。 | 二次被害の防止と職員の意識改革。 |

外部監査機能の強化は、単なる監視の強化ではない。

それは、職員が「不当な指示に従わなくて済む」ための防波堤であり、専門的な知見に基づいて行政サービスの質を高めるためのアドバイザリー機能でもある。

外部の視点を制度化することで、特定の有力者への忖度が働かない客観的な基準が確立される。

職員の意識改革と「組織のアップサイクル」
大城市長が掲げる「職員との信頼関係の構築」は、旧来の主従関係から、対等なパートナーシップへの転換を意味する 。

これは、既存の職員という「人材(リソース)」の価値を、コンプライアンスという新たな枠組みの中で磨き上げ、再配置する「人材のアップサイクル」と言える。

ハラスメントが横行する組織では、有能な若手職員ほど離職し、事なかれ主義の文化が定着する 。

これを打破するためには、個人の尊厳が守られ、正論が通る組織文化への刷新が不可欠である。

大城新市長による「組織票に頼らない当選」という事実は、職員に対しても「特定の勢力に媚びる必要はない」という強力なメッセージとなり、意識改革の大きな契機となる。

さらに、職員の人材育成も大事である。市民の公僕としての期待に応えられるよう、日々の精進が求められる。職員から区長や市民へのパワハラもあり、実態としては、これが隠され見えなくなっている。早急な対応が必要である。

第二章:費用を抑え効果を最大化する経営戦略—アセットマネジメントの高度化
南城市は、沖縄本島南東部に位置し、世界遺産や豊かな自然に恵まれている一方で、合併によって引き継いだ多くの公共施設が老朽化し、財政を圧迫している 。

限られた予算の中で市民サービスの質を維持・向上させるためには、「低コスト・高付加価値」を追求する経営戦略への転換が求められる。

公共施設等適正配置計画と長寿命化戦略
南城市における公共施設管理の現状は、老朽化が進む一方で利用度が低下している施設も多く、適正な規模への縮小(ダウンサイジング)が避けられない 。

市はすでに「公共施設等適正配置計画」を策定し、優先順位に基づいた老朽化対策を講じているが、これをさらに加速させる必要がある。
 * トータルコストの圧縮: 壊れてから直す「事後保全」から、定期的な点検と小規模修繕を繰り返す「予防保全」への転換により、将来的な大規模改修費を平準化・抑制する 。
 * 未利用地の有効活用と売却: 佐敷マリーナ跡地や給食センター跡地など、維持費のみが発生している遊休地を、民間への売却や貸付に切り替えることで、管理費の削減と税収の確保を同時に図る 。
 * 受益者負担の適正化: 利用率が極端に低い施設については、存廃の検討と並行して、適切な利用料金の設定や指定管理者制度の導入による運営効率化を進める 。

民間提案制度の戦略的活用
南城市が積極的に推進している「公共施設等に関する民間提案制度」は、行政の財政負担を抑えつつ、民間の創意工夫を導入するための有力なツールである 。

この制度の真髄は、市が「何をすべきか」を指示するのではなく、民間事業者が「何ができるか」を競わせる点にある。

| 提案対象施設 | 事業目的 | 活用方針と制約条件 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 大里勤労者体育センター | 遊休地の有効活用、地域活性化 | 住宅街の環境配慮、雇用創出。 | |
| 知念体育館(跡地含む) | 観光交流拠点の形成 | リゾート環境地区との整合性、収益性確保。 | |
| コマカ島 | 無人島の資源活用 | 環境保護と安全保持の両立。 | |
| 佐敷マリーナ跡地 | 遊休地の再開発 | 地域住民との連携、漁業権等の調整。 | |
| なんじい鉱山 | 天然ガス・温泉資源の活用 | 県および個人との権利調整。 | |

これらの事業において、市は土地や建物を提供する代わりに、整備費や運営費を民間事業者が負担するスキームを構築することで、公費負担を最小限に抑えつつ、市民に新たなサービスや雇用を提供することが可能となる。

これが「費用を抑え、効果を最大化する」戦略の核心である。

第三章:副次効果としての「アップサイクル」思想の具現化
本報告書が提唱する戦略の最も独創的な副次効果は、行政運営そのものを「アップサイクル」の思想で塗り替えることにある。

アップサイクルとは、本来の価値を損なった「廃棄物(遊休資産)」を、デザインやアイデアによって次元の異なる高付加価値な製品(魅力的な施設・サービス)へと再生させるプロセスを指す 。

廃校・遊休施設を地域資本へ変換する
少子高齢化によって生じた「廃校」は、かつての地域コミュニティの核であった。

これを単に解体することは歴史と記憶の破壊であり、多額の費用を要する。

しかし、アップサイクルの視点に立てば、廃校は「広大な敷地、頑丈な構造体、そして地域住民の愛着」という極めて価値の高い素材となる。

全国の成功事例は、この思想を実証している:
 * 「道の駅保田小学校」(千葉県): 体育館を直売所に、教室を宿泊施設にアップサイクル。地域資源を販売する拠点として、年間100万人規模の集客を誇る 。
 * 「むろと廃校水族館」(高知県): プールを魚が泳ぐ水槽として活用。学校の備品をそのまま展示什器に利用することで、設備投資を極限まで抑えながら、SNS等で爆発的な話題を呼んだ 。
 * 「ハレとケ珈琲」(徳島県): 山間部の廃校をカフェとホステルに転換。静寂という環境を価値に変え、都市部からの若者を惹きつけている 。
 * 「大田口テラス」(高知県): 廃校を賃貸住宅とコミュニティスペースの複合施設へと改修。国の補助金を活用して自治体負担を抑え、移住者の定住促進と地域交流の活性化を同時に達成している 。

南城市においても、旧大里北児童館や旧知念農民研修センター、さらには市内に点在する遊休地 を、これらの事例に倣って「アップサイクル」することで、新たな観光拠点や移住者の受け皿へと昇華させることが可能である。

空間のアップサイクル:モビリティハブと遊休地の活用
物理的な建物だけでなく、都市空間そのもののアップサイクルも重要である。

例えば、活用されていない公園や広場を「モビリティハブ」として再定義し、電動シェアサイクルやデマンド交通の拠点とすることで、商業エリアへのアクセスを劇的に改善し、地域全体の利便性を向上させる 。

これにより、莫大な建設費を要する新道路の整備を代替し、低コストで都市の回遊性を高めることができる。

思想の波及:循環型社会の構築
アップサイクルの思想は、ハード面だけでなく、ソフト面における「循環」も重視する。

南城市の豊かな地域物産 を活用し、規格外の農産物を高付加価値な加工品へと変える「食のアップサイクル」や、地域の伝統芸能 を現代的なアートパフォーマンスとして再構築する「文化のアップサイクル」は、市民のプライドを醸成し、外部からの共感を呼ぶ。

大城新市長が掲げる「循環の街づくり」 は、まさにこのアップサイクル思想を政策の根幹に据えるものであり、これまでの「消費型行政」から「循環型行政」へのパラダイムシフトを目指すものである。

第四章:地域資源の高度利用と観光振興の戦略的再定義
南城市の経済を支える柱の一つは観光である。

しかし、単なる入域客数の増加を追求するモデルは、環境負荷の増大やオーバーツーリズムを招き、地域住民の生活を圧迫する。ここでも、「効果を最大化する」ための選択と集中が求められる。

聖地・歴史資源の「高付加価値型」活用
世界遺産「斎場御嶽」や「久高島」は、南城市の至宝である 。

しかし、これらの資源は宗教的・歴史的に極めてデリケートであり、無秩序な観光化は許されない。
 * 琉球歴史回廊の形成: 斎場御嶽だけでなく、玉城城跡、知念城跡、大里城址公園といったグスクを結ぶ「ストーリー」を構築し、市内全域を巡る滞在型観光を促進する 。
 * 着地型観光の推進: 住民が主体となったガイドツアーや、地元の定置網にかかった魚を食す体験プログラム など、地域に直接利益が落ちる仕組みを強化する 。
 * データに基づく適正管理: 観光客の動態をデータ化し、混雑の緩和や環境負荷のモニタリングを行うことで、資源の持続可能性を確保する 。

キャラクター・ブランド戦略の再構築
南城市のキャラクター「なんじぃ」は広く親しまれているが、これを単なる「かわいいマスコット」から、南城市の「アップサイクル・アイデンティティ」を象徴するブランド大使へと進化させる 。

例えば、廃校を活用した施設のオリジナルブランド商品に「なんじぃ」を起用し、高品質な「南城ブランド」として確立することで、地域外への付加価値の輸出を図る。

第五章:信頼回復に向けた情報公開と市民参加のアップサイクル
行政改革の最終的な目標は、市民が「自分たちの街を自分たちで動かしている」という実感を持てるようにすることである。

しがらみを排した透明なプロセスが、市民の当事者意識(エンゲージメント)を呼び覚ます。

徹底した情報公開と「見える化」
「外部監査機能の強化」の一環として、市の財政状況や政策決定プロセスをリアルタイムで公開するダッシュボードの構築を提言する。

どの施設にいくらの維持費がかかり、どの民間提案がどのような収益をもたらしたかを公開することで、市民による「ピア・レビュー(相互評価)」が可能となる。

市民参加のアップサイクル:ワークショップから共同経営へ
単に意見を聞く「市民説明会」は、往々にして不満の受け皿となりがちである。

これをアップサイクルし、市民が遊休施設の運営案を出し合い、クラウドファンディング等を活用して自ら運営に参画する「共創型」のモデルへと進化させる 。

徳島県三好市の事例に見られるように、事業計画の段階から地域住民を巻き込み、文化や歴史を尊重した対話を重ねることで、施設は「行政のもの」から「自分たちのもの」へと変わる 。

この「所有感の転換」こそが、施設の長期的な持続性を保証する。

結論:南城市の新たな航路—再生と循環のモデル都市へ
南城市が経験したガバナンスの危機は、旧態依然とした地方政治の限界を露呈させたと同時に、新たな時代への扉を開く契機ともなった。

大城憲幸新市長に託された使命は、単なる「市政の正常化」にとどまるべきではない。

それは、南城市という都市そのものを「アップサイクル」し、21世紀型の持続可能な自治体経営のパイオニアへと進化させることである。

本報告書で詳述した戦略—「しがらみ打破」による透明性の確保、「外部監査強化」による公正な基盤構築、「民間提案制度」による財政効率の最大化、そして「アップサイクル思想」による既存資産の価値転換—は、互いに密接にリンクしている。
 * 透明性の確保が、民間事業者の参入意欲を高める。
 * 外部の知恵が、行政コストを抑えながら付加価値を生む。
 * 付加価値の向上が、地域経済の循環を加速させ、市民の信頼を強化する。

このポジティブ・フィードバック・ループこそが、南城市が目指すべき未来である。

「費用を抑えるが効果を最大化する」という戦略は、決して「ケチな行政」を意味しない。

それは、資源を大切に使い、知恵を絞って、より豊かな価値を創造するという、沖縄の伝統的な「黄金(くがに)言葉」にも通ずる崇高な経営姿勢である。

南城市が、不祥事という負の遺産を乗り越え、それを強靭なガバナンスと創造的な都市経営という正の遺産へと「アップサイクル」し、全国の地方自治体の希望となることを期待する。

南城市の新たな航海は、今、始まったばかりである。

信頼という帆を張り、透明性という羅針盤を携え、アップサイクルというエンジンを回し続ければ、必ずや持続可能な豊かさという目的地に到達できるはずだ。

市民、職員、そして民間パートナーが三位一体となって、この「南城モデル」を共に築き上げていくことが求められている。

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